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根管治療の現状 ~その実際と考え~

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はじめに -井の中の蛙 大海をしらず…-

日本の歯科治療の中で近年むし歯の数は年ごとに減ってきています。しかし根管治療においては、日本は欧米先進国の中で際立って再治療が多いといわれる国です。 我々日本の歯科医にとり、このことは大変不名誉な現状であります。この現状に気づいてすらいない歯科医も多いのです。

私自身、とても悔しく思うところですが、しかし、現実においてはこの状況は今後も続くであろうと思うのです(後で詳しく述べます)。 根管治療の再治療は難治性(治療自体が難しく、しかも治りにくい状態)になりやすく、抜歯に至るケースが多くなります。私の手がけている根管治療において80%くらいは他院で根管治療後の再治療を占めています。

どうして日本だけがこうした再治療が多いのでしょうか?
それは日本の歯科の健康保険制度と深く基因していると私は思います。

欧米諸国と比べ、根管治療の評価は驚くほど低く設定されているからです。 このことは今現在も続いています。 煩雑で長時間、デリケートで高い技術が要求される根管治療は、歯科の治療の中で歯を残すとても大切な治療であるにも拘わらず、一番うとまれ、犠牲になり、短時間の治療で終わってしまうことが多いのです。

我々日本の歯科医も、このことは知りつつもやかましく主張することはありませんでした。低評価の中、我慢強くやってきたのです。 歯科の保険制度がもたらした一切のツケが再治療が多いという現状になっていると思います。 私はこの大変不名誉な現状を甘んじて受け入れ、何とか、少しでも改善させ向上させてゆきたいと思うものです。 私が少人数完全予約制にした大きなきっかけはこのことにあります。

根管治療の実際

根管治療の技術革進は大きく進化しています。我々歯科医は知識と技量もそれに伴い進化しなくてはいけません。
そして大きく3つのポイントがあります。どれもオリジナリティをもち、質の高いものです。

当院の根管治療の基本方針は以下です。

(1)1回の治療時間は長めにとる
(2)慨ね3回以内で終了とする
(3)短時間で何回もダラダラとやっていくことはしない

ラバーダム処置

根管治療の実際の画像

このラバーダム処置は古くからある処置なのですが、根管治療の基本原則であります。 私自身、統計をとったものではありませんが、この処置をやるだけでも再治療になるケースはかなり減らせると思います。

一滴の唾液(ツバ)の中に想像を超える細菌の数があります。このダ液からの隔離と根管治療に使う強い殺菌力をもつ薬剤からのもれを防ぐものです。 この処置がどうしてもできないことがありますが、これに準じたもので他からの汚染がないようにやっています。

この大切な処置は、2008年、保険からはずされました。日本の歯科保険制度の大きな欠陥、問題であるといえます。今の日本の歯科医は根管治療において、このラバーダム処置をやっているのでしょうか? 私が日本の根管治療の再治療が多い現実はこれから先の将来も続くと暗く言ったのは、このラバーダム処置のほとんどなされていない現実を知っているから言っているのです。

とはいえ、実際ラバーダム処置は煩雑です。しっかりとすると5分くらいはかかります。 手っ取り早い処置ではありません。しかも保険適用はありません。患者数の多い医院はまずやれないと思います。

根管拡大と洗浄

最も技術革新の進んだ分野です。その代表がNiTi(ニッケルチタン製)ファイル(針のような尖ったヤスリと考えて下さい)です。 とても柔軟性があり、曲がった根管に無理なく入っていきます。 基本的に電動式であり、手でやるものではないのです。

ラバーダム処置

手でやるファイルとこのNiTiファイルをおりまぜてやるもので、まさに革新的な治療です。

旧態依然とした今までのやり方では根管を傷めることが多く、再治療になりやすく、治すものが壊わすもののようなものです。 NiTiファイルはそれなりのコストはかかります(従来のファイルに比べかなり高価である)。また使う器具類も導入し、すぐ使えるというものではありません。

このような先進的な根管治療は、日曜日に治療する医院や患者数の多い医院ではまず望めないでしょう。
何故ならこうした技術修得には、土・日曜日に研修セミナーに参加して、しかも自分なりにトレーニングを積んで、実際に少しずつ応用していくものなのです。治療時間に余裕のない多忙な医院では無理なことと言えましょう。

ここで、根管と言うものをイメージで示します。

上から・横から見た根管治療のイメージ

根管を横から見ると、このように曲がっており(ワン曲しているという)、上からみるとダ円形や水滴のような形です。
丸い円型でなく、その形態は複雑です。

根管を拡大していくということは、円型に太く大きく拡げていくイメージです。 曲がったところは曲がった状態を尊重しながら太くしていく。ダ円形のところはダ円の細長い部分を取り残したりする危険性があったり、曲がった先端はつき抜けたりすることがあるのです。

NiTiファイルはこのような危険性をはるかに少なくしました。

私は良心的根管治療は丁ねいにやることはもちろんですが、NiTiファイルを使っていることだと思います。 目に見えない根管の先端をきれいにしている作業は非常にデリケートであり、如何に困難なことであることがおわかりいただけたかと思います。 この根管拡大と洗浄と、次に述べる根管充填は歯科医技術(ウデ)、実力の差が如実にでるものです。

このような重要な治療は、日本の健康保険制度の中で極めて低い評価(分かり易く言えば安い)であることを知っておいて下さい。

根管充填

根管充填

私の採用している術式はcontinuous wave condensation technique(通称CWCT又はCWTと呼ばれています)を採用しています。 私なりに訳しますと、「持続的加熱流体仕様垂直加圧式根管充填法」少し長たらしくなりました。

根管を3次元的にすき間を極力なくして根充剤(根管治療の最後につめる薬剤)を電気的加熱軟化させて緊密に圧入していくものです。 今一番進んだ術式とされており、欧米の根管治療の専門医の多くがこの方法を第一に選択しています。

いくらマイクロスコープでよく見えるといっても、根管の奥深い先端まで見えるものではありません。 写真の器具の先端は200℃近く瞬時に加熱され、根管内へもってゆき、根充剤を流体化しながら圧入していくものです。 安全かつ確実にやるには熱と使う材料との関係を習熟しており、随所に匠の技が必要とされ、細心の注意でもってやるものです。使い慣れるにはかなりの熟練を要します。 従来の根充法より格段にむずかしいテクニックですが、その分、より確実な根管充填ができます。 この術式を行なっている歯科医は今の日本では極めて少数派です。

まとめ

根管治療をするということは、その歯を残すという強い目的意識をもってやっていく治療です。 今まで述べてきました根管治療をやってゆけば、治療した歯は抜かずに全部残せると思いがちです。 しかし、そうではありません。根管治療にも限界はあります。その限界の先は、外科的根管治療、再植そして抜歯となります。

予後不良となるケースとして以下のような歯です。(全てではありません)

  • ・根管治療のやり直しの多い歯
  • ・根管治療期間の長い歯(少なくとも1ヶ月以上)
  • ・大きな病変、病巣のある歯
  • ・ヒビや歯根がわれている歯
  • ・ムシ歯が根管にまで進行している歯
  • ・歯周病と合併している歯
  • ・たとえ残したとしても長期的に身体全体のことを考慮して良くないと思われる歯等々
    (最近では、ガンの手術や移植手術の前に細菌を多くもっている歯は、治療もしくは、抜歯しておくということが多くあります。)

私は根管治療する前の診断は厳しくみています。 敢えて根管治療をやって、1年も経たずに抜歯したというケースは、多く経験しているところです。 様々の状態で根管治療をしていくものですが、治療して残すことが目的であれば10年以上(できれば一生)は必要と考えています。

なんでもかんでも歯は抜きません。歯は残しますという歯科医がいますが聞こえはいいかもしれません。根管治療に限界があるという現実を身にしみて知っている私は、このような患者集めのキャッチフレーズは信じていません。

従来に比べ、かなりの歯は救え、残せるようになってきました。
旧来のやり方でいくら丁寧に長い時間かけた根管治療しても使う器材器具が古いものですと、再治療が多いという現実は変わらないのです。時代に遅れることなく最先端の根管治療に更新していく必要があるのです。

◎再治療にならないようにするには、患者さんにとって、一番最初の根管治療がとても重要な治療になります。ここでいい加減な根管治療がなされると再治療になるリスクは高まります。 痛くなくなったから治ったというのもではありません。原則をふまえた根管治療がなされることが重要なのです。

余談になりますが(日本の歯科における専門医について)

ここで欧米先進国の専門医制度について少し述べておきましょう。 保険制度が異なる欧米と日本と一概に同等と見なすことはできないにせよ、欧米において一度(ひとたび)専門医と称すれば、その専門分野、領域においてのみ専念し、治療するものです。そして自費診療となっています。

欧米では歯内治療(根管治療を主にする)の専門医は、根管治療に関してのことだけをやる、つまりかぶせる治療(補綴ホテツという)やムシ歯治療などはしないのです。 単一の専門医、複数の専門医である場合でも専門以外の治療はやらないものなのです。

例えば歯周病の専門医が根管治療やむし歯の治療してその治療費を請求することは通常ないのです。 インプラント専門医はインプラント埋入手術のみやるものです。後のかぶせる処置(補綴処置といいます)は補綴専門医もしくは一般の開業医が担当してやるものです。 また補綴の専門医が根管治療などはやらないものです。

こんなにクドクドと言う理由は、日本の専門医制度のあり方が欧米(世界基準)のものとあまりにもいい加減であいまいであり、かけ離れ自院の経営に利用されている現実が多々あるからです。 もちろん、日本においても数は極めて少ないものの、欧米専門医制度にならい、専門以外の治療はしないという高い倫理規定を守り、使命感をもって治療に当たっている歯科医もいます。 稀少な存在であると思います。

私は専門以外のことの治療をする専門医を自称の専門医と呼んでいます。 欧米では(つまり世界規準では)専門医として通用しません。 専門医と書いてあればこの辺のところをよく注意して見て置くべきです。

最後に

今までよく読んでいただきました。有難うございます。

私は日本の根管治療がいつか欧米先進国の中で再治療が少ない治療成績になることを願っています。 今の現状は忸怩(ジクジ)たる甘んじて受け入れるもので、私個人ではどうにもならない現実ですが、愚直にならいこのことを目指します。

今や、インプラントの埋入本数が多いことを宣伝文句にしている歯科医院はあちこちに多くみられます。
どれほどの自慢になるのでしょうか?

私は再治療の少ない治療こそ大切であり、誇れることであると思います。 これこそ患者さんから信頼を得られることではないでしょうか。質の高い治療をしないとできないことです。そして、そのことによってインプラントの数は当然減ってくるでしょう。

もう一度言っておきます。 一番最初の根管治療はとても大事です。再治療にならない為に・・・。

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